第30章 宝よ眠れ
「ふふ…、シャチ。良いことを教えてあげる。」
「なんだよ。」
「今の時代、料理ができる男…すなわち“料理男子”はモテるのよ!」
ピシャーン!!
シャチの頭に雷が落ちた。
「ま、マジか…ッ!」
「ええ、料理上手な人はとっても魅力的だと思うの。」
「じゃ、じゃあ…俺も料理が上手くなったら、船長くらいモテるかな?」
やっぱりローはモテるのか…。
あれだけ格好良ければ当たり前だけど。
いやいやいや。
今はソコじゃないわ。
モヤつく気持ちを振り払う。
「あら、知らないの? ローって実は、すごく料理が上手なのよ。」
本人曰わくだが。
実際には食べたことがないけどね…と心で呟く。
「ええ…ッ、知らなかった。船長が料理してるとこ見たことねぇし。」
「能ある鷹は爪を隠しちゃうからね。」
マジか…ッ、と再びシャチが雷に打たれる。
「モモ、俺…、料理頑張ってみるわ!」
モテるために!
ただそれだけのために、シャチの瞳に炎が宿る。
「うん、頑張って! じゃあ、まずは調味料や器具の場所から覚えないとね…。」
そうしてモモは、今まで自分のテリトリーであったキッチンをシャチに譲り渡し、調味料は棚の中、フライパンは戸棚の上…とアレコレ教え始めた。
そして昼食時、シャチの作った料理を食べて、ローが一言「なかなかやるじゃねェか…」と褒めたことにより、彼の炎はさらに大きく燃え上がった。
(これでゴハンはまともなものが食べられるよね。)
モモが船に来たばかりの頃、出された料理はなかなか悲惨だったから。
できれば、ローの手料理も食べてみたかったな…。
それはもう、叶わない願いになってしまう。