第29章 最後の出航
急いでハシゴを降りるけど、揺れる船にもたついてしまい、手間取る。
「モモ、危ないわよ! 私が登るから、船に上がりなさい!」
落ちやしないかとヒヤヒヤしながら見守った。
「大丈夫よ…--あ。」
言ったそばから足を滑らしてしまう。
「きゃあぁッ、モモ!」
メルディアはとっさに走り出し、受け止めようと腕を突き出した。
“ROOM”
ブゥンとサークルが広がる。
“タクト”
フワッとモモの身体が浮き上がり、そのまま引き寄せられるように移動し、船の上まで戻った。
「あ、ありがとう…。」
「お前はバカか? 自分の運動能力くらい把握しろ。」
ケガをしてからでは遅い。
「ごめんなさい…。」
真剣な眼差しを向けられ、シュンとうなだれる。
メルディアの来訪に浮かれ、迂闊な行動を取ってしまったことは確かだ。
「モモ…!」
そうこうしている内に、メルディアが息を切らして船へと上がってきた。
「あなたって子は…ッ、私の心臓を潰す気…!?」
モモが落ちたときの、あのヒヤリとした感覚が未だ胸に残っている。
「もっと、自分の身体を考えなさい!」
ピシャリと言われて、モモは肩を竦ませる。
「…ごめんなさい、メル。」
メルディアが怒るのは無理もない。
明らかに自分が悪いのだ。
「メル姐さん、ちっと怒りすぎだよ。モモのドジはいつものことだし、無事だったんだから いいじゃねぇか。」
あまりの怒気にハラハラしてシャチが仲裁した。
「黙ってなさい! あなた、これから先、本当にそれで……ッ。……いえ、私も怒りすぎたわ。ごめんなさい。」
「ううん。」
彼女の怒りは、自分を心配してのこと。
それがちゃんとわかっているから。