第29章 最後の出航
「ローの手が好き…。」
指に刻まれたDEATHの文字とは対照的に、暖かくて優しい手。
モモは、その手に触れてもらえることがなにより好きだった。
「優しいところが好き。」
「優しくなんかねェだろ…。」
ううん、あなたは誰よりも優しい。
冷たいことを言っても、その言葉の裏にはいつだって優しさが隠れているのをモモは知ってる。
「それから…。」
「…わかった、もういい。」
恥ずかしくなってしまったのか、もう十分だと止められる。
どうして、まだ言い足りないよ。
あなたの好きなところはまだいっぱいある。
それにまだ、1番好きなところを言ってない。
あなたの1番好きなところ。
それは…--。
「意志を貫き通すところが好き。」
「……!」
例えば目の前に立ちはだかる敵が、どんなに強敵でも、ローは躊躇わずに突き進んで行くのだろう。
そんな意志の強い彼だからこそ、恋をした。
好きって言葉じゃ言い表せないほど、愛してる。
「あとね…、」
「もういい、黙れ…。」
なおも言い続けるモモの唇を自分のソレで塞ぎ、強制的に黙らせた。
これ以上、煽ってくれるな…。
ただでさえ、溢れ続けるこの気持ちが、今にも爆ぜてしまいそうだ。
お前が好きだよ、こんなにも…。
想いの強さをぶつけるように、モモの甘く柔らかい唇を吸い上げた。