第29章 最後の出航
ローがキッチンから出て行ってから、モモはヒスイと2人で食器を洗った。
モモがスポンジを使って洗い、ヒスイが洗った食器を受け取り布巾で拭く。
どんなときでもヒスイは大事なパートナー。
自分は未来を決めたけど、ヒスイにそれを強要する気はない。
だから、ヒスイにも選んでもらわなければ。
皿洗いの手を止めないまま、己の大切なパートナーに尋ねた。
「ねえ、ヒスイ。」
「きゅー?」
「わたし、次の出航で最後にしようと思うの。」
「きゅ…?」
モモがなんのことを言っているかわからず、ヒスイは頭の触角を揺らした。
「…次の島で、わたしはこの船を降りるわ。」
「きゅきゅ…!?」
ガシャーンッ
驚きのあまり、ヒスイは手に持った皿を落として割ってしまう。
「あぁ…、ホウキ持ってこなくちゃ。」
「きゅきゅッ!」
そんなこといいから説明してくれ、とモモの袖を引っ張る。
「ヒスイ…、わたしはもう決めたの。でも、あなたにそれを押しつける気はないわ。」
本当は、あなただけは一緒にいて欲しい。
でも、ヒスイもこの船の仲間なのだ。
他の仲間と離れ離れになるということを強要してはダメ。
自分のワガママでヒスイの未来を決められない。
「だから、あなたが選んで…。」
ここに残るか、
一緒に来るか。
どちらの選択でも、自分は受け止めるから。
最後の船出まで、そう日はない。
メルディアはモモの願いを叶えてくれただろうか。