第28章 心の痛みを
メルディアにはモモの気持ちが少しだけわかるのだ。
愛する人のため、一度は夢を捨てたメルディアだからこそわかる。
だから、止めない。
愚かな決意をしてしまった彼女を、決して止めない。
だって、彼女の味方になれるのは、この世界に自分だけしかいないから。
「モモ、私もあなたの共犯者になる。だから、あなたの心の痛みを、私に半分わけてちょうだい。」
彼女がひとりで抱える痛みを、自分にも背負わせて欲しい。
「……メル。」
胸に抱いたモモの声が揺れた。
そっと拘束を緩めて顔を覗けば、キツく目を閉じて涙を堪えていた。
「泣きなさい、私の前でくらい。強がるんじゃないわよ。」
「でも…、強くなるって…決めたの。」
誰かに頼ることなく、自分の力でどうかするって決めたのだ。
ローと出会うまで、そうやって17年間生きていたから、ただそこに戻るだけ。
「フザけんじゃないわよ。辛いときに辛いって言ってなにが悪いの。悲しいときに悲しいって言ってなにが悪いの。」
ひたすら我慢するのが強さなら、そんな強さはクソ食らえ。
「それを支えてあげるのが友達なんだって、あんたが私に教えてくれたんじゃない。」
私じゃ役不足だっていうの?
メルディアはキツくモモを見据えた。
モモの中に、熱いものがこみ上げてくる。
ごめんなさい、メル。
そうよね。
わたしには、あなたがいるね。
メルディアだけじゃない、エースも、ホーキンスも。
モモにはローのおかげで出会えた人たちがいる。
『お前は、人の縁によって救われる。』
いつかホーキンスが占ってくれた、あの言葉が蘇って胸を熱くした。
封じ込めてた想いがみるみる溢れてくる。
「メル…、辛い…ッ。」
再び溢れ出した涙を、メルディアはそっと拭いながら、一緒に涙を流してくれた。