第28章 心の痛みを
人の目から、こんなに涙が出るものなのかと思えるくらい、モモは泣きに泣いた。
今まで我慢してきた分、瞳が溶け出してしまうくらい。
「…ずッ、ぐす…。メル…。目が、開かない…。」
泣きすぎて目が重たい。
「うふふ…、あなた…ひっどい顔よ。」
泣きはらした顔はぐちゃぐちゃで、普段の可愛い顔が台無しだ。
「……メルだって。」
同じように目を腫れぼったくしたメルディアだって、化粧がとれてボロボロになってる。
「「ふふ…ッ。」」
堪え切れずに、2人して吹き出してしまった。
そうしているうちに、モモは自分の心がずいぶんと軽くなっているのを感じた。
きっと涙と一緒に、我慢していたものが外へ出たから。
メルディアが痛みを半分受け取ってくれたから。
「モモ、最後にもう一度聞くわ。…本当に、後悔しないの?」
今ならまだ、違う未来を選べる。
そう諭してくれる。
でも、選ぶ道は もう決めた。
雪の積もる公園で、モモは選んだのだ。
「…しないわ。」
後悔はしない。
この先、なにがあっても、絶対に。
「わかったわ。なら私は、あなたの決めた道を全力で支える。」
ほんの僅かでも、モモの苦しみが軽くなるように。
自分が守ってみせる。
「ありがとう。」
メルディアの言葉に笑んだモモは、痛みに耐えるときよりも、よほど美しかった。
ぐっちゃぐちゃでヒドい顔だけど…。
「それなら、メル、あなたに頼みたいことがあるわ。」
モモにはこの島で、手に入れたいものがあった。
コネもツテもない自分には、それを手に入れるのは難しいかもしれない。
でも、商人となったメルディアならば、手に入れられる可能性が高い。
「なんでも言って。なにをすればいいの?」
自分にはもったいないくらいの頼もしい友に、モモはとあるお願いをした。
「あのね…。」