第28章 心の痛みを
「……嘘、でしょう?」
モモから秘密を打ち明けられたメルディアは、ことの大きさにしばらく声が出なかった。
「…本当よ。」
涙が止まったモモの瞳が、冗談なんかではないことを物語る。
「ど…どうして、ローに言わないの!」
こんなになるまで隠す必要なんてない。
今すぐ打ち明けるべきだ。
「言って、どうなるの?」
「どうなるって、それは……!」
メルディアにはわかってしまった。
ローとの付き合いの長さで言えば、モモより自分の方が長い。
互いの利益のためとはいえ、一時は親密な関係であったこともある。
だから、モモの言いたいことがわかってしまったのだ。
「だからわたし、言わないことに決めたの。」
強い意志を感じさせる声音で、モモはハッキリと言った。
「決めたって…、このまま隠し通せるわけないじゃない。ローは医者なのよ!?」
わかってる。
このままじゃ、いつか気づかれてしまうってこと。
「だから、船を下りるわ。」
「---!」
そこまでして…!?
しかし、そうでもしなければ、必ずいつか知られてしまう。
モモには時間がないのだ。
「そんなこと、ローが許すわけないでしょう。例え、あなたが黙って消えたって、きっと地の果てまで探しにくるわよ。」
これは冗談ではない。
間違いなくローはそうするだろう。
ローにとって、モモはなにに変えても傍にいて欲しい存在なのだから。
そう、なにに変えても。
「わかってるわ。だから…、だからね…--」
ごめんなさい。
それでもわたし、守りたいのよ。
ロー、あなたの夢を…。