第28章 心の痛みを
「ねぇ、モモ。私ね、あなたにお礼が言いたいって思ってたの。」
「え…?」
てっきり体調のことを追求されると思い、どう誤魔化そうかと身構えていたモモは、話の内容に戸惑ってしまう。
「あなたも知ってるように、私は夢のためにどんなこともしてきたわ。」
汚いこともしたし、自分の最大の武器であるこの身体も散々使った。
自分は汚い人間だ。
だからメルディアは海賊になることを選んだのだ。
海賊という名の自分は、とても楽だった。
どんなに汚れても、海賊だからと言い訳ができるから。
でも、あなたはそんな私を変えてくれたわ。
本気の恋に溺れ、夢を、己の道を見失ってしまったメルディアを再び立ち上がらせてくれたのは、モモだった。
『ケンカをしても仲直りできる。それが友達だと思うから…。』
ねぇ、知ってる?
私がその言葉にどれだけ救われたことか。
ねぇ、知ってる?
あなたは母以外で、初めて私の心に寄り添ってくれた人なのよ。
「私ね、海賊をやめたのよ。」
「えッ、そうなの?」
突然の告白に、驚きの声を上げた。
「ええ。だって、海賊をやってたのは夢を叶えるためだもの。絵画が集まった今、もう続ける必要はないでしょ。」
「それもそうね。」
それを聞いて、モモは密かに安心した。
メルディアは一見、女を武器にして男を手玉に取る女海賊に見えるが、本当は純粋な乙女なのだと知っていたから。
彼女の恋は、未だハッピーエンドとは言えないけれど、それでもメルディアには幸せになってもらいたい。
「それで、ちょっとした商船を営むことにしたのよ。これでも私、宝石や美術品を見る目は自信あるし。」
確かに、メルディアの見立てはかなり信用できるものがある。
美術品好きの彼女には天職かもしれない。
「私…、今、毎日が充実していて、人生がすごく楽しいのよ。」
そう言って笑う彼女は、とても幸せそうだ。
(良かった…。)
大好きな友の幸せに、モモの胸まで温かくなる。
「それも全部、あなたのおかげなのよ…モモ。」
メルディアは綺麗な笑顔をモモに向けた。