第28章 心の痛みを
「…わかったわ。とりあえず、私の宿に行きましょう。すぐこの近くなの。」
このままにするわけにはいかない。
ひとまず休めるところで横にさせないと。
具合の悪い人にすることといえば、そのくらいしか思い浮かばない。
メルディアはモモに肩を貸し、自分の宿へと連れて行くことにした。
宿の部屋に着くなり、モモはトイレで先ほど食べたものを全て吐き出してしまった。
「ぅ…ぇ…ッ」
苦しそうに嘔吐するモモの背中を、メルディアは黙って優しくさすった。
「…ぅ、ありが…と。もう、大丈夫…。」
ハァ…とひと息吐くと、よろよろと立ち上がる。
「モモ、横になった方がいいわ。私のベッドを使って。」
「ありがとう。…でも、本当に大丈夫だから。」
そう言って椅子に座るモモの顔色は、先ほどではないにしろ、まだ良くない。
モモのことはもちろん心配だが、メルディアはそれよりもモモが街で言った言葉が忘れられない。
『ローに知られたくないの。』
つまり、モモはずっと具合が悪いのに、それを彼に隠していたことになる。
「モモ…。あなた、もしかして…病気なの?」
「…そんなことないわ。」
彼女は無理に笑顔を作ろうとしたけど、その肩がピクリと震えたのをメルディアは見逃さなかった。
(モモ、あなたって…嘘が下手ね。)