第28章 心の痛みを
「なら…、ひとりじゃなければいいのね?」
突然第三者の声が割って入り、モモは驚いてそちらを見た。
「……メル!」
そこには数ヶ月ぶりに会う、モモの友達が立っていた。
「うふ、ひさしぶりね。こんなところに あなた達がいるなんて驚いたわ。」
感激のあまり彼女に抱きつくと、メルディアも抱擁を返してくれた。
そう。
島へ近づいた際、反応したビブルカードは、メルディアのものだった。
「というわけで、ロー。モモには私がついてるから、安心して飲んだくれてちょうだい。」
「フザけんな、いきなりなんだ。」
メルディアにはモモを攫ったという前科がある。
ローはモモと違って、100%彼女を信じられるわけではない。
「あら、心配なら私の心臓でも握っとく?」
ホラ、とメルディアはその豊満なバストを揺さぶり、ローの前に突き出した。
ローはそれを、なんとも嫌な表情で見やった。
(そんな嫌な顔しなくても…。)
もったいない。
同性のモモですら、メルディアの肢体には魅力を感じる。
異性であれば夢中にならない男はいないだろうと思った。
隣の2人のように…。
シャチとベポの目はハート型に変形しており、鼻の下はデレッとだらしなく伸びている。
「男が全員、お前みたいなのを好きだと思うな。俺は肉ばかりついた女は嫌いだ。」
「肉って…、あんた。」
メルディアの頬がヒクリと動いた。
「ほんっと、趣味が変わったわよね。」
以前は欲望を吐き出す穴すらあれば良かった男が、今や好みについて語る。
どうせこの男の好みは、肉がついていようと、なかろうと、目の前の彼女そのものなのだろう。
(まったく、以前にも増してメロメロになっちゃって…。)
そう悪付くけど、メルディアの心は喜びの感情が占めていた。
「とにかく、モモは借りてくわよ。」
モモの腕を取り、引きずるように外へ向かう。
「オイ…!」
「ロー、大丈夫! 少ししたら戻るから。」
引き止めようとしたローをモモは笑顔で制す。
そして2人は店の外へと揃って消えていった。