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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第28章 心の痛みを




「ヘイ、料理と酒…お待ちどおさん!」

空島への想いを熱く語り始めたところで、テーブルに大量の料理と酒が運び込まれた。

「うっひょー! 旨そう!」

骨が付いた大きな肉。
こんがりと焼かれた近海の魚。
色とりどりの野菜たちは衣をつけてカラッと揚げられている。

あまりにもボリューム満点な料理に、モモは若干引いた。

脂気の多さに一瞬吐き気が込み上げたけど、唾を飲み込んでなんとか耐える。

この数週間、感情を誤魔化すことだけは、すごく上手くなったと思う。

「モモ、美味しいよ! 食べないの?」

ベポの問いかけに、モモは笑顔を貼り付けて手前のスープを引き寄せた。

「食べるよ、…美味しい!」

嘘。
本当は胃液が渦巻いて、今すぐここで吐き出してしまいたい。


ドラム王国を出てから、モモはずっとひとりで戦っている。

悪化していく体調と。

胸を締め付ける、心の痛みと。


だが、モモは女優ではない。
嘘に慣れないただの小娘。

だから、一向に良くならない この吐き気が表情に出てしまわない前に、酒場を立ち去らなければ。

「ねえ、ロー。わたし、ちょっと薬屋さんに行ってくるね。」

「…あ? そんなのはメシのあとに行きゃいいだろうが。」

ちっとも食事が進んでいないモモの皿に目を向ける。

「でも、すぐに行きたいの。ちょっとだけだから、少し行ってきてもいい?」

「…しょうがねェな、俺も行く。」

「え…ッ」

ついて来られるのは困る。
実際には薬屋に行くほどの元気もないのだ。

「いいよ…! ちょっと行ってくるだけだから。ローはここでゆっくりしてて?」

「そんなわけにいくか。」

ローは大太刀を手に立ち上がる。


(バカだ…、わたし。)

ちょっと考えれば、ローが自分をひとりで行かせるはずがないとわかるのに。

ついには目眩がし始め、もうダメかと思ったその時…--。



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