第4章 ホワイトリスト
モモは背中の痛みに耐えながら、海沿いの崖をひたすら走った。
「いたぞ、あっちだ!」
新たな海兵に見つかり、徐々に追い詰められて行く。
ローが助けに来てくれて、嬉しかった。
抱きついて、泣いてしまいたかった。
(でも、わたしといたら、みんなはどうなるの…?)
これ以上、迷惑は掛けられない。
「……!」
崖の先は海。
ついに逃げ場がなくなってしまった。
「手こずらせやがって…。さあ、来い!」
「………。」
チラリと崖下を見た。
すごい高さだ。飛び降りればまず助からない。
一度捕まったときに船底から脱出したのとは訳が違う。
こんなときでも自ら死を選ぶようなマネはしたくない。
「バカなことは考えるな。捕まったって、別に殺されるわけじゃない。そう、保護されるだけだ。」
嘘。
殺されるわけじゃなくても、心が死んでしまうんだ。
「さあ、来い!」
伸ばされた手を避けようと、思わず後ずさってしまう。
ズルッ
「──!!」
足元を滑らせて、モモは崖から真っ逆さまに落ちる。
「……なッ!」
海兵たちの驚愕の声が聞こえる。
身体を襲う浮遊感に目を瞑った。
(わたし、なんてバカなの…ッ)
こんなことなら、もっとちゃんとローと話すんだった。
まだ伝えてないことが、たくさんあるのに。
“ROOM”
(え…。)
“シャンブルズ”
パッ!
次の瞬間、感じたのは浮遊感ではなく、嗅ぎ慣れた彼の匂い。
「言ったよな、逃がさねェと。」
聞き慣れた声に目を開けると、モモはローの腕に抱かれていた。
(……ここ、船の上!?)
「モモ!良かった、無事だったんだね!」
(ベポ……。)
「いや、マジで危なかったでしょ!崖から飛び降りるなんて、ないわー。」
「飛び降りるってか、落っこちたように見えたんスけど…。どっちにしろ間に合って良かったよ。」
(シャチ、ペンギン…。)
彼らは陸地ではなく、船でモモを追い、能力による瞬間移動で上手く連れ去ることに成功した。