第4章 ホワイトリスト
「よし、このまま出航するぞ。」
(ま、待って!)
ローに抱かれたまま、その腕に縋った。
(わたし、一緒に行けない…。)
「ええ!? モモ、一緒に行けないって、どうして?」
(あの海軍を見たでしょう? わたしと一緒だと、みんなを危険な目に合わせてしまう。)
モモの言いたいことを、ベポが代わってみんなに伝える。
「そんなことか…。バカなヤツだ、俺たちはもともと賞金首だぞ。今さら海軍に追われるくらいどうってこともない。」
「そうだぜ、モモ。それにもう、お前は俺たちの仲間だ!」
うんうん、と全員頷く。
(…みんな。)
「モモ、選べ。海軍に囚われるのと、俺たちに囚われるの。どちらがいい?」
ローが金緑色の瞳を覗き込んで聞いた。
(そんな言い方、ズルい。)
海賊になれ、とは言わない。
ただ、どちらに囚われたいか、と。
(ロー、わたし…。)
彼の顔がゆっくりと近づいて来る。
(捕まるなら、あなたに捕まりたい。)
ローの温かな唇を、目を瞑って受け止めた。
わー、おめでとう!と喜ぶベポと、わかってたけど、悔しい!と俯いて涙を零すシャチとペンギン。
この日、海の妖精セイレーンは、ハートの海賊団によって捕らえられた。
「どうやら、無事に逃げられたようだの。」
崖に生えた木の上から、サクヤは一連の様子を見守っていた。
「セイレーンには守り手がおったようだな。」
俗世の情報に疎いサクヤには彼がどんな人物か知らなかったが、しっかり『己』を持った強い男だというのはわかった。
なにせ自分の息子が彼に仕えていたから。
「しっかり2人を守れよ、鬼哭。」
『妖刀 鬼哭』サクヤの生んだ、何番目かの子供。
彼女はふわりと優雅に微笑むと、そのまま姿を消した。
『千年鍛冶師 付喪姫』
千年の時を生きる付喪一族の女。
本当に千年の寿命があるとは検証されていないが、巨人族に勝る長寿の一族。
彼らは物に宿った心を読むことが出来る。
繁殖率が低く生産には向かないが、最大の利点は物作りである。
彼らの作ったものには命が宿り、特に刀は妖刀として猛者たちに重宝される。
ランク:A
モモがサクヤと再び出会うのは、その後、何年も先の話。