第28章 心の痛みを
病は気から、とよく言う。
本当にその通りだと思った。
知らず知らずのうちに、モモは気落ちしてしまい、仲間たちから具合が悪そうに見えてしまったのだろう。
もしかしたら、ローにも気づかれてしまっているのかも…。
(それだけは…、絶対にダメ。)
心配を掛けたくない。
そして、心の内を知られたくない。
知られたくないのなら、きちんと自分を制御しなければ。
だって、1秒でも長く、この幸せを感じていたいから…。
「モモ、なんか最近 顔色良くなったよね。」
測量室で海図整理を手伝っていると、ベポがモモの顔をじっくりと見つめながらそう言った。
「そう…? 仕事ばかりの不摂生を正したからかな。」
時折 襲い来る体調不良にも負けじと食事をしたのが効いたのだろう。
「良かった。風邪、なかなか治らないから心配してたんだ。」
「…ごめんね。」
「ううん、治ったならいいんだ。それより見てよ、これが次の島の地図だよ。」
ベポが取り出したのは、比較的大きな港町の地図。
「これが次の島“港町 カプワ・ノール”か…。行ったことがあるの?」
「いや、ないよ。地図って意外と市場に出回ってるんだ。」
それはそうか。
エターナルポースだって買うことができるのだから、地図くらい買えて当然。
「でも、地図は指針と違って目にすることができるから、島を探検してるみたいで楽しいわね。」
「でしょ…!? モモにもわかる? まだまだいっぱいあるよ!」
モモの共感が得れて嬉しくなり、ベポは棚から地図の束を引っ張り出す。
(ああ…、せっかく整理したのに…。)
ドサドサと本や測量道具が棚から落ち、あっという間に無惨なことになった。
(ローが見たら、ゲンコツが飛びそう…。)
彼はああ見えて、きれい好きだから。