第28章 心の痛みを
船が海へ出て数日。
その間、モモは一心不乱に薬の調合をし続けた。
今までの遅れを取り戻すためでもあるが、集中の仕方はそれ以上だった。
それは相手をしてもらえないローが拗ねるほどに…。
「なァ…、モモ。」
「んー?」
「今日はもう、その辺にしとけよ。」
「うん、これが終わったらね。」
手にした擂り鉢から顔を上げず、なおもモモはゴリゴリと作業を続ける。
まるでいつかの蜜のときのようだ。
「なァ…。」
こちらをチラリとも見ないモモの背後へ回り、後ろから肩を緩く抱いた。
集中した彼女はまるで隙だらけ。
「……構えよ。」
無防備に晒け出された耳をパクリと食んだ。
「ひぁ…ッ」
不意をつかれた攻撃に、変なところから声が出た。
そんなモモの反応に気を良くし、ローはそのまま耳朶に、耳内に、ヌルヌルと舌を這わせ始める。
「ちょ、…やぁッ。あ、危ないから…ッ」
うっかり擂り鉢を落としでもしたら、今までの苦労が水の泡だ。
「だな。じゃあ、コレはもう手放せ。」
モモの腕が擂り鉢を取り上げ、ヒョイとテーブルの隅に置いてしまう。
「ダメよ、途中なんだから。返して…!」
取り返そうと手を伸ばすけど、後ろから抱きしめられているせいで、全然届かない。
手足のリーチの差が憎い…。
「俺が終わりっつったら、終わりなんだよ。」
「そんな、勝手に……んンッ」
必死の抵抗をするモモの口をキスで塞いだ。
上を向かせ、覆い被さるように唇を貪る。
何度も角度を変えて口付ければ、僅かに唇が開く。
その隙を見逃さず、すかさず舌を侵入させた。
舌先に触れる甘い感覚が、ローを狂わせる。
このまま全部、食べてしまいたい。
そう思った瞬間、ローはモモの身体を抱え上げていた。