第4章 ホワイトリスト
シトシトと雨が降り始めた。
以前、海軍に捕まったときも、こんなふうに雨が降っていた。
モモは息を荒げながら、夜の街の大通りを走った。
「いたぞ、セイレーンだ!逃がすな!」
一度見つかってしまえば、追っ手は増すばかり。
モモは自分の肺に限界を感じていた。
ハァ、ハァ…ッ
(怖い…。)
逃げ切れないのは、目に見えてる。
雨粒が徐々に大きくなり、モモの顔を打ちつけた。
(……助けて。)
脳裏に浮かぶのは、彼の姿。
自分から突き放して、逃げ出して、それなのにこんな時だけ頼るなんて甘すぎる。
それでも…、
「待てと、言ってんだろーが!」
ドカ!
鞘を付けたままの剣で後ろから思いっ切り殴られ、衝撃に倒れ込んだ。
「……ッ」
痛みに呻き、仰向けになったところに海兵が馬乗りになる。
「よっしゃ!捕まえたぞ、セイレーン!これで俺も階級が上がる!」
下卑な笑いを浮かべ、海兵がモモの首に手をかける。
(ロー…。)
心で彼の名を呼んだ。
(それでもわたし、捕まるなら、あなたが良かった…。)
目の前が滲むのは、雨のせいか、それとも涙か。
“ROOM”
ブゥンと周囲にサークルが張られる。
「てめェ、誰の上に跨がってやがる。」
“インジェクションショット”
ローの太刀が、上に乗った海兵を貫いた。
「ぎゃああぁぁ!」
海兵は痛みに悶えながら、モモの上から吹っ飛んだ。
(…う、そ。)
幻かと思った。
だって、そうでしょう?
心で呼んだら、本当に来てくれるなんて。
「汚ねェ手で、俺の女に触るんじゃねェよ。」
「“死の外科医”トラファルガー・ローだ!なぜここに!?」
海兵たちは、無害な女を追うのとは違い、一気に戦闘体制に入る。
「まさか、セイレーンを狙って…? 渡してなるものか、セイレーンを奪還しろ!」
おぉ!といきり立ち、ローを襲撃する。
(ロー、危ない!)
「奪還…? 笑わせんな、コイツはもともと俺のモンだ。」
フッと笑うとローは愛刀を構え直す。
“アンピュテート”
ローは目にも留まらぬ速さで海兵たちを斬りつけた。
途端に彼らの身体はバラバラになる。