第27章 決意
「…悪かったな。」
「え…?」
急に詫びたローに、心当たりのないモモは目をぱちくりとさせた。
「昨日のことだ。薬剤師であることを隠せと言ったことは、俺は今でも間違いじゃねェと思ってる。…だが、お前には辛いことだったはずだ。」
もし、ローがモモを愛すだけの ただの医者であったなら、きっとモモと共に国中の人々の病を治し、愚かな王に立ち向かったことだろう。
しかし、ローは医者であると同時に、海賊の船長でもあるのだ。
医者であることと同じくらい、海賊であることに誇りを持っている。
だから、モモの願いを叶えるためだけの男としては生きられない。
モモのことが1番大事だということは、間違いないはずなのに。
そのことに心苦しさすら感じる。
「…大丈夫、わかっているわ。」
ローの腕にもたれ掛かり、肩にこてんと頭を預けてモモは言った。
「あなたが、わたしやみんなのために そう命令したって、わかってる。あなたが、なにを優先させなくちゃいけないのか、…ちゃんとわかってるから。」
好きな女のワガママよりも、仲間全員の命。
それを優先できない人なら、最初っから惹かれたりはしない。
ローが優しくて誇り高いから、モモは彼を好きになったのだ。
だから決して、自分のためになにかを犠牲にしないで欲しい。
「ねえ、ロー。聞きたいことがあるの。」
彼の肩にもたれたまま、モモは静かに問いかけた。
「…なんだよ。」
「ローの夢は、なぁに?」
「俺の、夢だと?」
海賊王になり、この海を制すこと。
ひとつなぎの大秘宝を手にすること。
どれもローの夢。
だけど、自分の本当の夢は…。
果たさなくてはいけない使命は…。