第27章 決意
向けられた笑みの優しさに、怒る気が失せた。
まあ、もともと怒っていたわけではなかったのだが。
「ここでなにしてんだ。」
「ローたちを待っていたのよ。シャチとペンギンは?」
「そんなことだろうとは思ったが…。アイツらなら先に帰ったよ。」
チラリと隣のベンチで爆睡する白クマを見る。
護衛が眠ってどうする。
まったく使えないクマだ。
ローはモモが座る、2人掛けのベンチの隣に腰を下ろした。
「なに見てたんだよ。」
先ほど、モモがやけにぼんやりしていたような気がして尋ねる。
「ん、別に…。それより、お城で聞きたかったことは聞き出せたの?」
こうして無事に戻ってきてくれたことは なにより嬉しいが、きちんと情報は聞き出せたのだろうか。
「ああ。重要な情報とは言い難いが、ヤツの国の様子が少しわかった。」
ドフラミンゴが治めるドレスローザは、遙か遠くの国。
少しでも状況を掴むことは、ローにとって大事なことだ。
「そう。なら良かった…。」
「……。」
気のせいならいいが、彼女は少し元気がないように感じる。
最近は眠れていると思ったが、もしかしたらまだ調子が悪いのかもしれない。
「…どうした?」
手袋に包まれた手で、モモの赤く色づく頬に触れた。
「え、なにが?」
「元気がない。」
「……!」
モモは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにそれを笑顔に変える。
「やだ、わたし…元気よ。」
そう強がってみせるけど、一瞬の間が、彼女の元気のなさを証明した。
おそらく、昨日の件だろうとローは思った。
「薬剤師の身分を隠せ」など、自分の仕事に誇りを持った彼女には、さぞかし辛い命令だったに違いない。