第27章 決意
ワポルの自室を出たローたちは、ドルトンから教わった王族専用の下山ルートを使い、誰にも見つからず、山を下りた。
行きのように能力を使うことがなかったので、体力面では非常に助かったが、地道に足を使ったため、少し時間が押してしまったのも事実。
町へ下りる頃には、すっかり朝日が上っていた。
「遅くなっちまいましたね。」
「モモたち心配してるッスかねぇ。」
ローほどでないにしろ、モモもそこそこ心配性だ。
もしかしたら今頃、自分たちになにかあったのではと肝を冷やしているかもしれない。
「だが、あの元守備隊長のおかげで早急に王国に追われることはなさそうだ。」
守備隊の目は未だドルトンに向いていることだろう。
「そうですね。安全なうちにドンズラしましょう!」
3人は早足に町を突っ切る。
すぐそこの公園を抜ければ、すぐに自分たちの船が停泊しているはずだ。
しかし、ローの目は公園にいるはずのない人物の姿を捉える。
(アイツ…、なんであんなところに。)
思わず足を止めた。
「どうしたんスか、船長。…って、…あ。」
ローの視線の先には、公園のベンチに背を向けて座るモモの姿が。
「あれ…、モモじゃん。」
顔こそ確認できないが、あのキャラメル色の髪は間違いなく彼女だ。
ローだけでなく、シャチとペンギンですらすぐにわかる。
「あんなところでなにして…。あ、もしかして俺らを迎えに来たんじゃねぇの?」
なるほど、彼女のやりそうなことだ。
「…チッ、オマエらは先に戻ってろ。」
「へーい、あんまり怒っちゃダメッスよ、船長。」
きっとモモは、心配してここまで来たのだから。
「…わかってる。早く行け。」
シッシッと2人を追いやると、ローは公園へと足を向けた。
ベンチに座るモモは、おそらく自分たちを迎えに来たはずなのに、どこかぼんやりとしてなにかを眺めていた。
(…なんだ?)
視線の先を追ってみると、町の子供たちが元気良く遊んでいる。
(この寒ィのに、よくやる…。)
寒さなど感じないのではないか。
そう思いながらモモの背後で足を止めると、足音に気がついたのか、モモがくるりと振り返る。
「お帰りなさい、ロー。」
雪も溶けるような笑顔でそう言われた。