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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第27章 決意




「俺様が知っていることは それくらいだ…! もともと他人の国なんざ、興味ねぇからな! さあ、心臓を返せ…ッ」

もうこれ以上はなにも知らないと言い張るワポル。

おそらく本当のことだろう。

ろくに政治も行わない愚王だ。
むしろ、得られた情報があるだけ運が良かった。

「ああ…。」

ドクンドクンと脈打つ彼の心臓を、ポイッと放り投げる。

「カ…カバ! なんてことを…!」

すかさずワポルは飛びついた。

その瞬間を狙って…。


“カウンターショック”


バリバリ…!


「ぎげ…ェ…!」

バリバリと流れる電流がワポルの身体を貫き、意識をあっという間に昇天させる。

ドサ…ッ。

プスプスと煙を上げ、ワポルは再びベッドに身体を沈ませた。

「…この分だと、しばらく起きないッスね。」

白眼を剥いて気絶するワポルを覗き、ペンギンが言う。

ワポルには、ローたちが島を出るまで寝ていてもらった方が都合がいい。


ふとワポルの横に転がった心臓に目をやる。

例えば、これを先ほどの元守備隊隊長に渡してやったら、どうなるだろうか。

この愚かな王を島から追い出し、国民は病気という恐怖から解放されるのかもしれない。

「どうしたんスか、船長。」

だけど、ローはそんなヒーローになる気はない。

「……いや。」

誰かに助けてもらうのではなく、国民自身が立ち上がらなければ意味をなさない。

けれどもし、この場にモモがいたならば、どんな選択をしただろうか。

きっと、自分になど思いつかない道を選ぶような気がした。


モモとローの考えることは天と地ほど違う。

そういうところに惚れた。

そういうところを守りたいと思う。

モモなら、この心臓を握るだろう。

でも、ローはそれをしない。

それがモモを守ることだとわかっているから。

自分は誰かのためのヒーローにはなれない。

ただひとり、愛する人のヒーローであれば、それでいいのだ。

例えそれが愛する人の意に添わなくとも。


「……行くぞ。」

夜明けは近い。
朝には彼女たちと合流しなければ。

無防備に気絶した愚王と、彼の心臓を残してローたちは立ち去った。

この国の恐怖政治は、この後数年もの間、続いていく…。



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