第27章 決意
ドクン…ッ。
「ぐぉー、ぐぉー…。…んぁ?」
ドラム国王 ワポルは、やけに騒ぐ胸の鼓動にて目を覚ました。
「むにゃむにゃ…。なんだぁ? さては昨夜の晩飯、大砲のバターソテーが腹につかえているな…。…って、なんじゃお前ら!!」
ふかふかなベッドから むくりと起き上がってみると、見知らぬ3人組がこちらを見下ろしており、眠気など一気に醒めた。
「静かにしろ…。」
「おのれ、くせ者が! 誰か、誰か! チェス、クロマーリモ…!」
腹心2人を呼ぶワポルに、ローは苛立つ。
「静かにしろ、というのが聞こえねェのか?」
そうしてローは手に持った“なにか”をギュッと握りしめる。
ドクン…!!
ひときわ大きく心臓が跳ねる。
「ぐ…げぇぇ…ッ」
得も言われぬ胸の苦しみがワポルを襲い、ベッドの上をのた打った。
「な…なにを…?」
ぜえぜえと息をつきながら、ワポルは侵入者を見上げる。
「…コレがなんだかわかるか?」
死の刻印が施された彼の手には、どこから持ってきたのであろうか、肉の塊が乗っている。
いや、肉というより なにかの臓器のようだ。
それもまだ、ドクンドクンと脈打っている。
「き、気持ち悪ィ…。それがなんだと……はッ!?」
脈打つソレは、心臓のようにも思える。
そういえば、さっきから変に胸が苦しい。
とっさに己の胸を押さえた。
すると…。
「ぬあぁぁ~! 俺様の心臓がなぁい!!」
ワポルの胸にはぽっかりと四角い穴が空いている。
「だから…、騒ぐなと言っている。」
再びローは手の中の心臓を強く握った。
ドクン…!
「ぐぎゃぁぁ! ぐ…ぐるじい…ッ、止めでくれ…!」
「お前が騒がなければ返してやるさ。」
「ざわがない…。ざわがないから…止めで…!!」
ワポルは涙をボロボロ零しながら、喘ぎ喘ぎ懇願した。
なんともあっさり落ちるワポルに、ローは内心拍子抜けする。
(こんなヤツが、この国の王…か。)
こんな王に治められなければならない国民に、少しだけ同情した。