第27章 決意
ローたちが侵入した部屋は、暗闇の部屋と称しても間違いないような一室だった。
壁にいくつか灯された松明が唯一の明かりだ。
「ここは…地下牢みたいッスね。」
暖炉もない地下牢は、吐く息が凍てつくほど寒い。
ここには人間がひとりだけいるはずだが、牢に収監されている者が国王の居場所など知るはずもない。
「チッ…、当てが外れたな。」
適当に他の人間を捕まえなければ。
「…誰か、いるのか?」
3人が話し合っていると、不意に鉄格子の中から男の声が聞こえた。
収監されている人間だろう。
「誰だ、こんなところに。」
別にわざわざ答える義理などなかったが、その人物のやけに意志を宿した声に興味が湧き、ローは口を開いた。
「別に…、ただの侵入者だ。」
「侵入者…?」
男の声に明らかな動揺が見える。
その反応にローはますます興味を持つ。
普通、牢に入れられるような人間は、城に侵入者が現れようが知ったことではないだろう。
それなのに牢にいる男ときたら、城を心配するような声音だ。
(いや…、この国の状勢じゃ、正しい人間こそが悪になるのかもな。)
反逆という罪。
だとすれば、彼はいったい何者だろうか。
「俺たちは国王に少し聞きたいことがあってな…。お前、国王の居場所を知っているか?」
「国王…、ワポルに…?」
国王の名を呼び捨てにした。
やはり彼は己の正義を貫く反逆者なのだ。
「あんな男に…いったいなにを聞くというんだ。」
「なに、この前 開催された世界会議で聞いた、とある国について聞きてェだけだ。」
「とある国?」
「それは言えねェ。」
ローの答えに牢の中の男はしばらく黙り込んだ。
「…間諜か。ならば話すことはない。即刻立ち去れ。」
意志の強い声で会話を拒まれる。
「なんだ、コイツ…。行きましょうぜ、船長。」
確かに、なにも話さないのであれば、さっさと違う人間を当たった方がいいだろう。
だが、これだけは言っておきたい。
「最低な人間が君臨する国は、なにもこの国だけじゃねェんだよ。」
「………ッ!」
ローの言葉は、自国を愛する彼の胸を強く貫いた。