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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第27章 決意




チョッパーと別れ、モモはドクトリーヌのツリーハウスへと足を向けた。

家の前では相変わらず、ベポがイビキを掻いて眠っている。

起きてしまわなくて良かった。
心配してあわあわとするベポが目に浮かぶ。

モモは決意を胸に、ツリーハウスのドアを開けた。



ガチャリ。

「…お帰り、小娘。長い散歩だったね。」

家の中のドクトリーヌは、テーブルで椅子に足を組んで座り、優雅にお茶を飲んでいた。

「はい。森で素敵なトナカイに会いました。」

そう言いながら向かいの椅子に腰を下ろす。

「そうかい…。」

きっとウチのバカトナカイのことだろう、と思いながらドクトリーヌはモモの分のお茶を淹れる。

お茶を差し出し、礼を言う彼女の瞳は、先ほど 動揺を隠せなかった人物とはまるで別人だった。


「覚悟は決まったようだね。」

「…はい。」

どうするのか、とは聞かなかった。

聞かなくても目を見ればわかったから。

大丈夫か、とも聞かない。

それを聞くほどドクトリーヌはお人好しじゃないし、それを決めるのはモモ自身だから。

「ひとつ、いいですか?」

「なんだい。」

「あと、どれくらいなんでしょうか。」

彼女の聞きたいことに察しは付いた。

「そうさね、8ヶ月…ってところかい。」

「そうですか…。」

そう言って、モモは静かに目を伏せた。


「薬、分けてくれてありがとうございます。…色々と、お世話になりました。」

お茶を飲み終え、モモは深々と頭を下げた。

「ああ。もしこの島にまた来ることがあったら、ウチへ寄んな。もちろん、薬酒を持ってね。お前なら、茶くらいは出すよ。ヒーッヒッヒッ。」

ドクトリーヌのその言葉を、モモは最大限の気遣いだと理解し、笑顔を返した。

「さようなら。」

後悔はしない。
そう彼女の目は語っていた。



「バカな子だね…。これだから、海賊と恋をするもんじゃないのさ。」

130年を越えた年月を生きる大先輩は、閉じられたドアにそう投げかけた。



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