第27章 決意
モモはチョッパーの肩で散々泣いたあと、彼と2人で帰り道を歩く。
「お前…、鼻が赤いぞ…。」
子供のように泣きじゃくったため、まるでトナカイのようだ。
「…羨ましい?」
照れ隠しにそう聞いてみると、全然羨ましくねーよ! と一蹴されてしまった。
結局、あのあとチョッパーは涙の理由についてなにも聞かなかった。
モモにはそれが、嬉しくて、ありがたい。
「ここを真っすぐ行ったら、ドクトリーヌの家だよ。」
「ありがとう。」
チョッパーにはまだ薬草採取の仕事が残っている。
一緒に帰宅するわけにはいかない。
ここでお別れだ。
「モモのおかげで、薬草採取が楽になりそうだよ。」
森は見違えたように、緑が息吹く。
「うん…。ねえ、チョッパー。もし、少しでも薬草が増えてあなたたちの助けになるなら、町の人たちにもそれを分けてくれない?」
ほんの少しでいい。
町の人たちに治療という希望を与えて欲しい。
それはモモの勝手なワガママ。
「…わかった。ドクトリーヌは治療に莫大な報酬を要求するけど、もしそれを払えない人を見つけたら、おれがこっそり治療するよ。」
だけど、ここにいる小さなお医者さんは、モモの願いを叶えてくれる。
「ありがとう…。」
「モモはまだしばらくこの島にいるのか?」
せっかくできたドクトリーヌ以外の話せる人間。
できればもう少し一緒にいたかった。
「ううん、明日の朝には海へ出るわ。」
「…そっか。」
あからさまに肩を落とす姿に、胸が痛い。
「ごめんね。」
モモももっと彼の話を聞きたかった。
だけど、ここで彼を共に海へと誘うほど、モモは無責任な人間ではない。
「なあ、モモ…。もし…、もしさ。おれが海に出ることがあったら、また会えるかな?」
その真っすぐな視線に、思わずモモは瞳を逸らしてしまう。
「…そうね、海は…広いから。そういうこともあるかもしれないわ。」
「そっか…、海は広いんだもんな。」
まだ見ぬ外の世界に想いを馳せる彼に、モモは胸を痛ませた。
(ごめんね…。)
絶対に会えるわ…!
いつもならそう言うであろう言葉を、モモが口に出すことはなかった。