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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第26章 魔女とトナカイ




思考が停止した。


「きゅきゅぅ…?」

心配したヒスイが、小さな手でモモのブーツの紐を引っ張るのを、のろのろと見た。

(なに…、今…、なにを…言われたの…?)


「…呆れたね。本当に気づかなかったのかい。」

予兆はあった。
指摘されたことで、今までのことがジグソーパズルのように次々と当てはまっていく。

「まさか、心当たりがないなんて言わないだろうね。」

あります。

そう答えたかったけど、震えた唇が言葉を紡げない。


「それで、…どうするんだい。」

どう…する…?

どうしよう、という気持ちと、
どうしたらいいんだろう、という気持ちがぶつかり合う。

「手術するつもりなら、あたしがやってやるよ。」

「しゅ…じゅつ?」

「ああ、あたしは医者だからね…。ヒッヒッヒッ。」

ドクトリーヌは魔女のように笑う。

身体が小刻みに震えた。

でもこれは、決して彼女が怖いからではない。


「…少し、散歩してきます。」


結局、口から出た言葉は、現実から逃げるということだった。


「お待ち。」

背を向けてドアを開こうとするモモをドクトリーヌは止めた。

「これだけは忘れるんじゃないよ。どのみちお前にゃ、時間が残ってないってことをね。」

ドクトリーヌの言葉は、ガラガラと崩れていくモモの心をひどく打った。


「…わかってます。」


モモは振り返りもせず、外へ飛び出した。


家の外へ出ると、モモを待っていたはずのベポは、大きなイビキを掻いて眠っている。

モモはそんな彼の隣をすり抜け、ヒスイと共に森のさらに奥深くへと足を進めた。


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