第26章 魔女とトナカイ
「よくもまぁ、そこまで言えるもんだ。…貸しな。」
ドクトリーヌは引ったくるように酒瓶を奪った。
そして躊躇わずにキュポンと栓を開ける。
中身の匂いを嗅ぐと、熟成された薬酒独特の香りが鼻を突く。
今まで嗅いだどんな薬酒よりも奥深い香りだった。
「……。」
今度は手の甲に薬酒を少しだけ垂らし、それを舐めた。
ほんの少量だというのに、舌先が熱くなり、身体中の血液が循環する。
アルコール度数はそんなに高くない。
だというのにこれほどの血行促進を感じられるのは初めてだった。
ドクトリーヌは優れた医者だ。
だからわかる。
この薬酒にはとんでもないくらい、薬効があると。
「ヒッヒッヒッ、悪くないね。」
自分で世界一と言うだけある。
これは認めざる得ない。
「持って行きな!」
ドクトリーヌは棚から薬品を取り出すと、バラバラとテーブルに並べた。
(や、やった…!)
モモは心の中でガッツポーズをすると同時に、ホッと胸を撫で下ろした。
というのも、自分で作った薬酒の味見を一切していないから。
だって、ひと舐めしようものなら、あっという間にひっくり返る。
「世界一」という言葉に嘘はないけど、少々の不安があったというのが本音。
(でも良かった、認めてもらえたわ。)
それが嬉しく、誇らしい。
「あら、これは抗生剤ですか?」
並べられた薬品の中に、透明な液体が入った瓶を見つける。
「そうさ、あたしの特製だよ。お前の言葉じゃないが、世界一よく効くさ。ヒーッヒッヒッ。」
それは興味深い。
完成された抗生剤を使用するのは、医者のローになるだろうが、どんな成分が入っているのか知りたい。