第4章 ホワイトリスト
「セイレーン、そなたのランクを教えてやろうか。」
本能的に聞きたくない、と思った。
でも聞かねばこれから先、生きていけないだろう。
(…教えて。)
モモの眼差しを受け、彼女は口を開く。
「『奇跡の歌い手 セイレーン』リストランクはSだ。」
最高ランク。
海兵が大人数でモモを探し回る理由はそれだ。
「可哀想だがお前がいくら息を潜めても、声を封じたとしても、見つかってしもうた以上、これから先、自由に生きるのは難しいだろうな。」
彼女の言葉を呆然とした気持ちで聞いた。
(あの時、歌を唄わなければ…。)
後悔しても、もう遅い。
モモは唄ってしまったし、見つかってしまったのだ。
「それが嫌なら、戦うしかあるまい。」
(そんな、わたしにはそんな力ないわ。)
「オイ! そこで何してる!?」
ハッと振り向くと、海兵が3人こちらに歩いてくる。
(見つかった…!)
「ふぅ…。目立ちたくはないのだがな。」
カチャリと彼女は太刀を鳴らした。
「同じホワイトリストの仲間だ。一度だけ助けてやろう。」
行け、と目線で促される。
一瞬迷ったが、モモに海兵と戦う術はない。頷いて駆け出した。
(ありがとう!)
「あ、オイ! 待て!」
スルリと彼女が海兵の行く手を阻む。
「私が相手をしよう。」
豊かな白髪が風に煽られて華麗になびく。
「お、お前、『千年鍛冶師 付喪姫(つくもひめ) サクヤ』!!」
「なに!? リストランクAの?」
「ツイてるぜ! セイレーンだけじゃなく、付喪姫までいるとはな!」
出世欲をギラつかせて彼らは次々と剣を抜く。
サクヤがモモを助けようと思ったのは、ほんの気まぐれ。
(助けたところで、あの子はもう逃げられまいがな…。)
戦うこともできない者がかいくぐれるほど、海軍の手は甘くない。
例えば誰か、彼女を守る者でも現れない限り…。
(出来れば、この先、幸せに生きて欲しいものだが。)
彼女に対して出来ることと言えば、幸せを願ってやるくらいだ。
「でりゃあぁぁ!」
雄叫びを上げて襲い来る海兵たちに、サクヤは太刀を一閃させた。