第26章 魔女とトナカイ
ベポの言質も取れたことだし、早速森へ向かうべくモモは準備を始めた。
カバンに採取用品を入れ、ついでに棚から自信作の薬酒を1本持ち出す。
(念のため…ね。)
そして船番は必要ないと判断し、ヒスイも連れて行く。
「モモ、くれぐれもボクから離れないでね。」
「わかってるわ。ベポこそ、野生に戻ってわたしを置いてかないでね。」
ベポとヒスイの3人で森へと入っていった。
めったに人が足を踏み入れない森の中は、モモの腰が埋まるほど雪が積もっている。
ベポが先頭を歩き、その後にできた道をついていった。
「ねえ、モモ。こんな雪の森に薬草なんかあるの?」
「あるわ。この辺りは積雪量が多くて探せないけど、もう少し奥に行けば樹の密集度が高くなって、薬草も探しやすくなるの。」
「へぇ、モモは物知りだねー。」
雪すら見たことのないモモそんなことを知るはずもない。
これもまたユグドラシルの知恵。
雪に慣れたベポのおかげで、モモたちは比較的楽に森の奥へと進めた。
ここまでくれば採取もしやすい。
「これは…、氷結草ね。火傷や炎症の薬にできるわ。こっちはスネークベリー。種子を粉末にすると喉に良いの。」
「ちょ…モモ。足元気をつけて動いてね。あと落雪にも注意して。」
薬草を見つけては足元も確認せずに動き回るので、ベポはさっきからハラハラしっぱなしだ。
「うん、わかった。…あッ、これ、ニトロダケだわ。知ってる? 乾燥させると火薬みたいに爆発するのよ。」
大きな樹に生えたキノコをビョンと大きく跳ねてもぎ取る。
「わ…ッ、危ないってば!」
「うん、わかった。…ん、あれはなんの薬草かしら。」
そうしてまた駆けていく。
「だから、危ないって~!」
ベポの注意など、まるで聞こえていなかった。