第26章 魔女とトナカイ
「わッ、びっくりした…。どうしたの、急に立ち上がったりして。」
モモはクルリとベポに向き直ると、ローにだってしないような甘えた顔で見上げた。
「ねえ、ベポ? わたしのお願い、きいてくれる?」
「え…え…。」
なんだろ、すごい嫌な予感がする…。
「な、なに?」
「わたし、森に入りたいなぁ。」
そう、買いつけられなければ、採取すればいいだけのこと!
「え…ッ! だ、ダメだよぅ。ほら、キャプテンにも動き回っちゃダメって言われてるし。」
「ううん、違うわ。“ひとりで”動き回っちゃダメって言われてるの。」
つまり、ベポと一緒なら約束を破ったことにはならない。
「いや…、でも…ほら、危ないし。森は雪でいっぱいだよ?」
「あら、雪のエキスパートさんがいるから安心でしょう?」
なんたって、あなたは白クマなのだから。
「ねえ、ベポ…。お願い…。」
モモは自分の中で1番…たぶん可愛いであろう顔を作った。
何度も言うが、ローにはこんな顔、頼まれたって絶対できない。
でも不思議とベポにはできてしまう。
それが恋人と親友の境界線というやつなのか。
「う…うぅ…。」
一方、ベポは冷や汗をダラダラ垂らしながら困った。
モモのお願いはききたい。
けど、危ないこととなれば話は別。
どうにか諦めさせられないものか。
(あ、そうだ…。)
自分はモモの弱点を知っているじゃないか。