第26章 魔女とトナカイ
行動は早い方がいい。
一行は手筈を整えると早々に散った。
ローたちはすぐにドラムロッキーを登り、王宮付近に潜伏。
夜になったら侵入し、現国王ワポルの自室にて寝込みを襲い、情報を吐かせる。
それが終わればすぐに退散して、朝には船に戻る。
そういう計画だ。
「…うまくいくかな?」
船への帰り道、2つのソリを引きずるベポに問いかけた。
「大丈夫だよー。だってこの国、港や海岸に見張りさえいないんだよ。本当に海賊が攻めてきたら、どうするんだろうね。」
思えば自分たちの上陸もあっけないものだった。
「やっぱりアレって、普通じゃないんだ。」
「うん、ボクらは海賊旗を掲げてるからね。海賊も客になる港町ならともかく、普通は警戒されるよ。小さな王国なら特に。」
考えてみれば、いつ侵略されるかわからないのだ。
当然だろう。
「…この国、おかしいのね。」
モモは国を治める側に立ったことはない。
これからも立つことはない。
だから、王様の気持ちはわからなかった。
国民から“命を守る”という手段を奪って、いったいなにがしたいんだろう。
「ほら、モモ。船が見えてきたよ。」
「うん。ごめんね、荷物全部持ってもらって。」
「なに言ってるの、当たり前だよ。モモって、たまに変なとこ気にするよねー。」
「そ、そうかな…。」
それはベポの方では? と思ったが、言わないでおく。
「きゅきゅー!」
船に戻ると、船番をしていたヒスイが「おかえり!」と飛びついてきた。
「ただいま、ヒスイ。ひとりにしてごめんね。」
「きゅい、きゅきゅい!」
大任を果たしたぞ! と胸を張られた。
念のため、船番として置いてきたが、どうやら船に気がついた者はおらず、周辺には足跡ひとつ残っていない。
「見回りくらい、したらどうなのかしらね。」
確かにこうも警備が手薄だと、この国の行く先が不安になった。