第25章 医者がいない島
店の外でローを待っていると、幼い子供たちが目の前をきゃっきゃと走り回る。
「どこの島でも、子供は風の子なのね。」
この寒い中、よく平気で遊べるものだ。
ヒュルリと吹いた風が積もった粉雪を舞い上げ、モモは寒さのあまり、ベポにピッタリとくっつく。
巨体の白クマさんは人間よりも体温が高い。
「この雪国だもの、きっと普通の国よりケガや病気が多いんでしょうね。」
無邪気に遊ぶ子供たちを眺めながら、モモは呟いた。
「キャプテンの言ったこと、気にしてる?」
「……。」
気にしてないといえば嘘になる。
自分は薬剤師だ。
いついかなるときも、その事実を隠したくはない。
だけど…。
「わたしの…みんなのために言ってるって、ちゃんとわかってるわ。」
できるだけクルーを危険に巻き込まないようにするのも、船長の仕事だっていうことも。
それに比べて自分はどうだろう。
ちっぽけなプライドから身分を隠すことを躊躇い、上手く嘘を吐くこともできない。
そのくせ、それが原因で戦闘になっても、みんなを守る力もないのだ。
いつからわたしは、こんなにワガママになったんだろう。
「ねえ、モモ。」
ベポの大きな手が、モモの肩を抱いた。
「ボクはさ…、なにがあってもモモの味方だからね。もしキャプテンが許さなくても、ボクはモモの味方になるよ。だから、もしなにかあっても、一緒に怒られようね?」
見上げてみると、つぶらな瞳が優しくこちらを見ていた。
苦しみを分かち合おう、と彼は言う。
「……うん。」
優しい優しい、わたしの親友。
あなたがいてくれて、良かった。