第25章 医者がいない島
酒場の外へ出ると、それぞれ買い出しのためにローとモモとベポ、シャチとペンギンの二手に別れて行動した。
シャチとペンギンは食料や雑貨を、自分たちは火薬と燃料を担当した。
この寒い雪国、火薬と燃料を扱う店はすぐに見つかった。
「いらっしゃい。」
店内に入ると独特の火薬臭が鼻を突いた。
(……うッ)
充満する臭いに目が回る。
「…ロー、わたし 外にいていい?」
堪らず店外に出たくなった。
「……。」
ローの目がジトリとこちらを見る。
きっとモモが面倒事を起こさないか心配なのだ。
島に着いては面倒事を引き起こすのが自分だ。
言い訳はできない。
「すぐそこにいるから。絶対に動かないわ。」
それでもローは頷かない。
だって、そう言いながら何度ちょろちょろと動き回ったことか。
(モモ、きっと具合が悪いんだ。)
唯一モモの体調不良を知るベポは、彼女が外へ出たがる理由がすぐにわかった。
無理もない。
具合が悪い人にとって、この火薬臭はキツすぎる。
「キャプテン、じゃあボクも外にいるよ。それならいいでしょ?」
ベポの提案にローは眉を上げる。
なんだか最近のベポは、妙にモモに優しい気がする。
だがまあ、ベポはもともと優しい気性だ。
ふと感じた違和感に目を瞑り、それならばと頷いた。
「…くれぐれも目を離すなよ。」
「アイアイ! 行こ、モモ。」
だんだん青くなっていく顔色に気づかれまいと俯くモモの手を引いた。
外に出て冷たい空気を吸うと、せり上がってきていた吐き気が徐々に収まっていく。
「モモ、大丈夫?」
「…うん。」
本当はベポにも気づかれたくなかったけど、敏感なモモの親友を誤魔化すことはもうできない。
「大丈夫よ、きっと酒場でお酒の匂いに酔っただけ。」
今までそんなことなかったが、寝不足で身体が少し弱っていたのと、温かいワインの蒸気を知らず知らずのうちに吸い込んでしまったのだろう。
「…ボクが嗅がせたから。ゴメンね。」
「違うったら!」
まったく、ベポは打たれ弱い上に、気にしすぎる性格なんだから。