第25章 医者がいない島
「あのぉ、すみません。」
ようやくひと息吐いたところで、モモは店主に声を掛けた。
「ん、なんだい?」
「この町の薬屋さんはどこにありますか?」
そう尋ねてみると、どうしたのか店主は動きを止めた。
「……?」
「あぁー…、お客さん、外から来たんだもんな。」
なにか言いづらそうに店主はポリポリと頭を掻いた。
「お仲間に病人でもいるのかい?」
店主の問いにモモはほんの少しだけドキリとした。
今の自分は病人の括りに入るのだろうか。
(ううん…、体調が優れない日くらい、誰にでもあるわ。)
ただ、それが少し長引いているだけ。
だからモモは首を振って答えた。
「いいえ、いないわ。」
「なんだ、良かった。」
店主はあからさまに安心している。
「それがなにか?」
薬屋はどこかという質問にまだ答えてもらっていない。
「あー…、この町には薬屋はないんだよ。」
「え…ッ」
薬屋がない?
確かに大きくはないけど、決して小さくはないこの町に?
「えっと…、じゃあ病院はどこですか?」
それなら病院で薬を買うしかない。
「病院もないんだ。」
「ええ…?」
今度こそ本当に目を丸くしてしまった。
「薬屋も病院もないって、病気になったときどうすんだよ。」
言葉を失うモモの代わりにシャチが尋ねた。
「耐え忍ぶ…しかない。」
「いやいや…、医者はなにやってんだよ。」
「この島に、医者はいない。」
いるのはドラムロッキーに巣食う悪魔たちと、森に住む魔女だけ。