第25章 医者がいない島
「「おっしゃー! 着いたー!」」
ココアウィードの町に到着し、シャチとペンギンは雄叫びを上げた。
「酒場酒場酒場! 酒場行こうぜ!」
と言いながらも足はすでに酒場の方角へ向いている。
「わたし、薬屋さんに行きたいな。」
「ええ~、先に酒場行って暖まろうぜ!」
うむむ。
本当はすぐにでも行きたい。
「まずは暖まるのが先だ。慣れねェ雪道で自分が思ってる以上に体力を消耗してるぞ。ついでに薬屋の場所も聞きゃいいだろ?」
ローにそう言われたら頷くしかない。
おとなしくみんなと一緒に酒場へ向かった。
「いらっしゃーい!」
町唯一の酒場。
店内はとても活気づいていた。
「お兄さんたち見ない顔だね、旅人かい?」
「ああ。」
旅人には違いないから、嘘ではない。
「そりゃ、こんな町にわざわざようこそ。なににします? オススメはホットワインだよ。」
香辛料をたっぷり入れたホットワインは、雪国では定番の飲み物だ。
「じゃあ、それを4つと…、モモはどうするー?」
「わたしはホットミルクをください。」
「あいよ。ホットミルクにブランデーは入れるかい?」
香り付けにブランデーを入れるのも、これまた定番の飲み方だ。
だけどモモは1滴とて酒類が入れば目を回してしまう。
「いえ、結構です。」
気を利かした主人に苦笑しながら遠慮した。
「ふわー、暖まるなァ…。」
湯気を上げるホットワインを煽り、しみじみと呟く。
「うん、美味しい! モモも飲んでみる?」
ベポから差し出されたカップにモモは顔をしかめた。
たっぷり入った香辛料がワインのアルコール臭を消しているが、独特の香りがなんだか気持ち悪い。
「ん…、大丈夫。香りだけで酔いそう…。」
「モモは不憫ッスねぇ。こんなに旨いものが飲めないなんて。」
「ホットミルクも美味しいわよ。」
同情する目を向けてくるみんなに、わざと美味しそうにホットミルクを飲んでやった。