第25章 医者がいない島
ベポがクルーに島の発見を伝えたのは、それから数日後のことだった。
「みんなー! 島が見えたよー!」
ベポの声にモモはデッキに飛び出した。
「ほんと!? わッ、寒ーい!」
外にはいつの間にか雪が散っていた。
「雪! 雪~!!」
モモは興奮してピョンピョン跳ねる。
「止めろ、また転ぶぞ。」
呆れたローがモモの上に厚手の上着を被せた。
「わっぷ…、だって、ほら! 雪なんだもの!」
「見りゃァわかる。」
「わたし、雪、初めて!」
きゃっきゃっとはしゃぎ、どうにか雪を掴もうとする。
その無邪気な姿がなんとも…--。
「かーわいいー。」
ローの心中を代弁するかのように、右隣でシャチが感嘆の声を上げる。
「まるで雪の妖精ッスね~。」
左隣ではペンギンがしみじみと言う。
なんか腹が立ったので、とりあえず殴っておいた。
「わあ、見て! 大きな山があるよ。」
島の真ん中には急勾配の山がいくつも聳えている。
「ドラムロッキーだね。あそこにこの島の王様が住んでいるんだよ。」
「お、王様!?」
「このドラム王国は王政の国なんだよ。」
ベポの説明にハーッと息を吐く。
王様だなんて絵本の物語のようだ。
「でもねー、詳しくは知らないけど、あんまり良い噂は聞かないんだ。」
特に今の国王は過去最低だと言われている。
「だから、国王軍とかがいたら、目を付けられないようにしようね。」
島に上陸しては問題を起こす自分だ。
今度こそはと神妙に頷いた。