第25章 医者がいない島
ガチャリ。
医務室のドアを開けると、ベポの言うとおり探していた人物がいた。
しかし、これまたどこかのクマのように、彼女は夢の世界にいるらしい。
ベッドに身体を預け、規則正しい寝息を立てながら眠っていた。
シーツでも変えていたのだろう、きちんと横にはならず、半身だけベッドに沈めるような変な体勢だ。
これでは疲れも取れないだろうに…。
ローは起こさないように、そっとモモの身体を抱き上げる。
「ん…。」
僅かに身じろいだモモが、ローの胸に子猫のように擦り寄った。
可愛い。
今すぐそのふっくらとした唇を塞ぎ、起こしてしまいたい。
でも、そんな欲望はぐっとガマンする。
モモが最近、あまり眠れていないことをローは知っていた。
原因もわかってる。
先日、自分の懸賞金が上がった。
ローにとっては、だからどうした? という出来事だが、モモにとってはそうではない。
懸賞金が上がったのは、間違いなくモモを海軍から取り戻した事件のせいだ。
彼女はそれを気にしている。
懸賞金が上がったところで、特に支障はない。
でも、モモはきっと「自分のせいで…」と悔やみ、そして自分の価値を恐れている。
それは例えローが、気にするな、守ってやる、と言ったって紛れるものではない。
ウォーターセブンでの事件は、それだけモモに大きなキズを負わせた。
身体にできたキズなら、いくらでも自分が治してやれる。
でも、心に負ったキズは時間の経過に委ねるしかない。
精神的なダメージは、これだから厄介だ。
ローにできることは、いつも通りに振る舞うこと。
あえて気にしたり、宥めたりするとモモはますます自分を責めてしまうから。