第25章 医者がいない島
けれど後ろめたさや罪悪感を感じたのは、この船でモモだけ。
ベポ・シャチ・ペンギンは、我らが船長がついに億越えになったことを喜んだ。
ロー自身はというと、記事を読んで鼻で笑った。
そう、きっとこんな気持ちでいるのは自分だけ。
それからというもの、モモはあまり眠れなくなった。
ローの懸賞金を簡単に上げてしまうもの。
自分が政府にとって、それだけの存在とは思わなかった。
もし捕まってしまったら、あのおぞましい未来が自分を待っている。
そう考えると、どうしても心に不安が宿る。
その不安は夜、ローと同じベッドにいてもやってきた。
ローといれば、大丈夫。
彼はとても強いから。
頭ではそうわかっているのに、どうしても不安が掻き消せない。
こんなにも情緒不安定になったのは初めてだ。
しかし、こんなことでローを心配させてはいけない。
彼の腕の中で、眠れなくても毎夜寝たふりを続けた。
そんな日々が続いたせいで、身体が徐々に弱り、風邪をひいてしまったのだろう。
(ああ、情けない…。)
自分もローの懸賞金が上がったことを喜べるくらい、心が強かったらいいのに。
弱虫な自分が嫌になって、ベッドに顔を押し付ける。
シーツからはまだ仄かにお日様の匂いがして、モモのささくれた心をゆっくり溶かしてくれる。
(…強くなりたい。)
こんなことで、くよくよしないくらいに。
ローを守れるくらいに。
窓から差し込む暖かい日差しがモモの頬を撫で、その心地よさが寝不足だった頭に睡魔を呼び込む。
モモはゆっくりと目を閉じた。