第25章 医者がいない島
「別に大丈夫だけど、どうかしたの?」
「実は…ほら、俺たちずっとウォーターセブンの酒場にいただろ。ちょっと飲み食いが過ぎてさ、腹を壊しちまったんス。」
一緒に行動していなかったけど、彼らの暴飲暴食の様は簡単に想像できる。
「もう、ほどほどにしないと…。それで、どうしたの?」
「薬棚から、勝手に薬をとって飲んだッス。」
「え…?」
それにしては、胃腸薬の数は減っていないようだが。
「飲んだの、どの薬?」
「んーと、確かここに入ってたヤツ。悪い、全部飲んじまった。」
ペンギンが指差す引き出しは、さっきまでちょうどモモが探していた場所と同じで…。
(そこに入っていたの、風邪薬なんだけど…。)
ラベル等は貼っていなかったけど、明らかに形状も香りも違う。
よくそれを間違えたものだ。
しかも全部飲んだって…。
それが胃腸薬だったとしても、過剰服用になる。
「…それで、その後の具合はどうなったの?」
「バッチリ治ったッス!」
「……。」
そんなわけないでしょう。
風邪薬なんだから。
よく病は気からと言うが、その最もたる人物がここにいた。
「ハァ…、もういいわ。次からはわたしに声を掛けてね。…危ないから。」
ピンピンしているようだし、心配なさそうだけど、薬の飲みすぎは本当に危ないときもある。
「……? わかった。ごめんな。」
あんまりよくわかっていなさそうなペンギンに、ことの真実を伝えるのは止めた。
素直な彼のことだ。
あれが風邪薬だと知った時点で、またお腹を壊しそう。
モモは苦笑いをするしかなかった。