第24章 幸せを呼ぶ潜水艦
「ロー、ホーキンスさんと なにを話していたの?」
少し遅れて船に上がってきたローに尋ねた。
「…別に。なにも話しちゃいねェよ。」
あら、ずいぶん機嫌が悪い。
どうしたのだろう。
ローの態度を不思議に思ったけど、あまり足を突っ込んでヤブヘビになるのも嫌だから、「ふぅん…」とだけ言っておく。
「出航しろ。」
「「アイアイサー!」」
船長の指示で碇が上がり、船が港を離れ始める。
「次にここへ来るのは1年後ね。」
その頃には本物の黄色い潜水艦が見られるだろう。
「そうだな。…時間を持て余すのもなんだ。その間に空島にでも行ってみるか?」
ローがいつか話してくれた、天空に浮かぶ島。
「行ってみたい…!」
「なら情報を集めて、ログが空を指すように調整しないとな。」
それはベポの仕事。
あんなんでも、我が海賊団の航海士だ。
「ねえ、ロー。」
「ん…。」
「わたしを海賊にしてくれてありがとう。」
「なんだ、急に。」
「海賊って、とても自由でしょ。もし、わたしが海賊にならなかったら、こんな自由を知らないままだったわ。」
あの海平線の向こうに、なにがあるかも知らないままだった。
「ロー、ありがとう。」
そう言って微笑む彼女が、なぜだかとても儚く思えて、ローは強く抱きしめた。
「わ…、どうしたの?」
「別に…。なんでもねェよ。」
なにがあっても離さない。
改めてそう誓い、モモの頭に頬を寄せた。
慣れ親しんだカモミールの香りが広がる。
ローの突然の行動に首を傾げながらも、モモは彼の好きなようにさせた。
バサバサバサ…。
視界にハトが飛び立つ姿が入る。
(あれ…。あのハト、確かあの時…--)
迂闊な自分が攫われてしまったときの記憶が僅かに蘇る。
(ううん、その前にも…確かどこかで…。)
どこで見たんだっけ?
記憶をさらにほじくり返そうとしたところで、ローの手が怪しくゴソゴソ動いた。
「ちょ、ちょっと…。どこ触って…!」
「仕方ねェだろ。お前の匂いは興奮すんだよ。」
だからって、こんなところで触らなくても!
みんなもいるのに。
暴走するローを引き剥がすのに必死になり、モモはハトの存在を忘れてしまった。