第24章 幸せを呼ぶ潜水艦
バサバサバサ…。
ハトは空を舞い、ひとりの男の肩へ止まった。
ポッポー、と鳴くハトは決して人語を話すことはない。
腹話術でもしない限り。
「チッ…、使えねぇヤツらだ。たかが女ひとり連行できないとはな。」
「どうするのよ。彼ら、行ってしまうわよ。」
「ワシの足ならば、すぐに追いつき攫ってこれるが…?」
帆を張り、沖合いに進む一隻の船を眺める。
「…慌てるな。セイレーンの居場所が断定できたことだけで、今は良しとしよう。」
「あら、あなたがそんなこと言うなんて珍しい。」
彼は目的のためなら手段を選ばない冷徹な男。
そんな彼から、見逃すような発言が出るとは思わなかった。
「見逃すわけじゃない。どうせヤツらは、1年後、この島に戻って来る。」
セイレーンの確保は、最悪そのときでも問題ない。
「忘れるな。我々の目的は、あくまで“プルトン”の設計図。派手な行動は控えろ。」
でないと今までの苦労が水の泡となってしまう。
「そうじゃな。“死の外科医”トラファルガー・ロー。ヤツを捕らえれば、おのずとセイレーンも確保できる。本部にそう報告しよう。」
「ああ。だが、その前に…。アイツらは皆殺しだ。使えねぇ部下などいらん。」
ウォーターセブンにて交わされる会話は、決して誰の耳にも届かなかった。
“死の外科医”トラファルガー・ロー。
巡回中の海軍の船を沈め、罪なき海兵たちの命をいたずらに奪った。
懸賞金 1億
数日後、郵便カモメが運んできた新聞で、ローがついに億越えの海賊となったことを知った。