第24章 幸せを呼ぶ潜水艦
たった数日の間だったが、この島ではたくさんの出会いがあって、嫌なこともあったけど、そのぶん素敵なこともたくさんあった。
とても密度濃い時間が過ごせたと思う。
でもこの島とも、もうすぐお別れ。
港へ移動する船を追って、モモは造船所の外へと足を向けた。
グイ…。
「こら、勝手に行くんじゃねェよ。」
服の裾を引っ張られ、元の位置に戻される。
「え…、でも船も受け取ったし…。」
もうここでの用事は済んだのではないか。
モモは首を傾げさせる。
「ンマー!! なんだ、すっかり忘れているのか? 今日は船の受け取り日だが、同時に新しい船のデザイン画を見せる日でもある。」
「……あッ!」
すっかり忘れてた。
そういえば、初日にそんなことを言っていたような気がする。
「ああ、そっか。モモは初日の打ち合わせのとき、ベポと一緒に外にいたもんな。」
「じゃ、どんな船にするのか全然知らないんスね。」
そうだった。
あの後いくらローに尋ねても教えてくれないから、結局モモはまだなにも知らないままだ。
「見たい! 見たいです、デザイン画…!」
新しい船はいったいどんな姿をしているのだろうか。
モモはズズイと身を乗り出した。
「ンマー!! そう慌てるな…。部屋を用意させるから、そこで--」
「イヤ、ここでいい。」
部屋を用意させるというアイスバーグの好意をローはバッサリ断った。
「1秒でも早く知りたがってるヤツがいるからな、ここで見せてくれ。」
誰を指しているかは一目瞭然。
「接客も仕事の内なんだが、仕方がないな。カリファ…。」
「はい、アイスバーグさん。デザイン画です。」
スチャッとカリファがデザイン画の入ったファイルを手渡す。
「まず、これが外観だが…。」
パクリとファイルを開き、1枚のデザイン画を取り出す。
「あ……。」
そこに描かれた船に、モモは大きく目を見開いた。