第24章 幸せを呼ぶ潜水艦
『お前はどんな船がいいと思う。』
いつか、そうローに問われとき、モモは素人なりの考えでこう答えたのだ。
『潜水艦、とか。』
それはただ、無益な争いが避けられたらいいなとか、海底を進む船なんて素敵…とか、そんな安直な発想からなんとなく言ってみただけ。
まさかそんな自分の意見を真剣に考えてくれるなど、夢にも思わず…。
だから、アイスバーグが見せてくれたデザイン画に描かれた船を一瞬理解できなかった。
まず目に付いたのは、船の色。
『そういえば、お前。色ならなにが好きだ?』
街のお祭りの中、ローはモモに聞いた。
『黄色が好きね。』
それが彼をイメージする色に思えたから。
船を彩るのは、一度目にしたら忘れられないような黄色。
そして明らかに普通の船とは違う形状。
独創的なフォルム。
それは子供のころに絵本で見た、あの船と同じ。
デザイン画に描かれた船は、黄色い潜水艦だった。
「ロー、これって…。」
驚きのあまり、感情が一周して、ただ唖然としてしまう。
「潜水艦だ。」
あっさりと言ってのけるローにパチクリと目を瞬かせた。
だって、だって…。
そんなはずないでしょう。
なんとなく言ってみただけなのに、それなのに。
大切な新しい船を、わたしに決めさせてくれたの?
そんなこと、夢にも思っていなかったから、あんぐりと口を開けてしまった。
その反応が、ローのお気に召さなかったようで…。
「なんだよ、嬉しくねェのか?」
ローとて、ただモモの言うことを叶えるために潜水艦にしたのではないだろう。
ちゃんとメリットがあると思ったから、そう決めたのだ。
自分の突拍子もない発言があなたの役に立てて…。
「……嬉しい。」
そしてなにより、モモのためにしてくれたサプライズが…。
「嬉しい、嬉しい…。」
モモの顔に満面の笑顔が咲く。
「嬉しい、ロー…!」
「そうかよ…。」
ローもモモの笑顔が見れて嬉しそうだ。
『だってほら、黄色は幸せを呼ぶっていうじゃない?』
確かにな。
今ここに、幸せがひとつ…。