第23章 仮面の暗躍
「ま…待ってくれ…! 悪かった、悪かったよ…ッ! でも、最後までしちゃァいねぇんだ!」
その言葉に一瞬足を止めた。
最後までしていない。
つまり、自分は本当にギリギリのところで間に合ったのだ。
それでも、彼らがモモを陵辱しようとした事実は変わらない。
モモが心に受けたキズは、なにも変わっちゃいない。
「だから、どうした? それで俺の怒りが収まるとでも?」
だとしたら、ずいぶんナメられたものだ。
「…良かったなァ、お前ら。もし お前らがコイツを犯していたら、殺したあと蘇生して、もう一度殺して、それでも収まらねェ。生まれ変わっても殺してやるよ。」
何度殺しても、殺し足りない。
良かったな…。未遂だったから、一度殺すだけで勘弁してやる。
そう言ってローは顔を歪ませ、凶悪に笑んだ。
「た…助け……。」
海兵の中には、恐怖のあまりブクブクと泡を吹いて気を失う者もいた。
それくらい、ローの怒りは凄まじい。
「ロー…、待っ…て…。」
怒れる鬼神の如きローを止めたのは、またしてもモモだった。
「…どうした。」
彼女に顔を向けるときだけは、ローは怒りの炎を鎮め、人間の姿に戻れる。
「も…、いい…の。」
もう、いい。
彼らを許すと言うモモに、ローは目を見張った。
「なにを言ってる。お前、自分がなにをされかけたか、わかってんのか?」
「……。」
わかってる。
嫌ってほど…。
目を綴じれば、今にも彼らの下卑た笑い声が聞こえてきそうだし、肌の上には、彼らのおぞましい手の感触が鮮明に残っている。
思い出すだけで、吐き気がしてきた。