第23章 仮面の暗躍
どうしてやろうか…。
目の前で抜き出した心臓を踏み潰そうか。
いいや、それなら少しでも死の恐怖が続くように首から下を1000のパーツに切り分けて、ひとつずつ潰していこう。
「ひ、ひィ…ッ」
狂気の光が宿ったローの目に、海兵は怯え切る。
“死の外科医”
彼ほどこのふたつ名が似合う男はいない。
頭の中で考えた報復を実行しようと、鬼哭を構えたその時…。
「ロ…ー…。」
掠れた声が自分を呼んだ。
その声に弾かれたように、振り返る。
「モモ…!」
腰が抜けて震え上がる海兵たちなど無視し、愛しい彼女のもとへ飛んでいった。
「大丈夫か!?」
乱れた衣服を素早く直し、優しく抱き起こす。
「…ぅ…ロー…。」
涙に濡れた金緑の瞳がローを見上げる。
モモの様子が、おかしい。
紡ぐ言葉はたどたどしく、舌が上手く回っていない。
それどころか身体の自由がきかないようで、ピクリと僅かに動くだけ。
「てめェら…、コイツになにをした…?」
視線だけで射殺せるような凶悪な目で、海兵たちを睨みつける。
「ひいィ…ッ! た、ただの麻痺薬だ…ッ、そのうち効果も薄れる…!」
瞬間、状況を理解した。
薬で身体の自由を奪い、彼女を陵辱しようとした。
そうだろう…?
再び、溢れ出すくらいの殺意が胸を占める。
「モモ、少しだけ待ってろ。すぐにコイツらを殺してやる…。」
モモをそっと横たえて、ゆらりと立ち上がる。
殺意に満ちたローに、海兵たちはガクガクと震え、情けないことに失禁までしてしまう。