第23章 仮面の暗躍
「うッ……。」
モモはようやく意識を浮上させた。
(あれ…、わたし…どうして。)
未だ頭がぐらぐらと揺れ、思考がまとまらない。
揺れているのは頭の中だけではない。
自分がいる部屋全体が揺れている。
(ここ…、船…?)
しかし、冷たい床の感触が愛する海賊船ではないと告げていた。
「お…、お目覚めのようだぜ。」
聞き慣れぬ男の声に視線だけ向ければ、見知らぬ男たちが数人こちらを見ていた。
彼らの制服には、嫌ってほど覚えがある。
(……海兵。)
次第にハッキリしてきた頭が、意識を手放す前の出来事を思い出させた。
(ああ、わたし…また…。)
海軍の手に落ちてしまった。
あの仮面の人は、やはり政府の人間だったのだ。
「おう、気分はどうだ?」
海兵のひとりがモモの近くにしゃがみ込み、顔を覗いて尋ねる。
「……ぅ。」
いいわけない。
そう答えようとするけど、なぜだか舌が回らない。
手足も動かない。
「あァ、悪いな。オマエは奇妙な歌を唄うらしいから、身体の自由を奪う薬を打たせてもらってる。当分身動きとれねぇよ。」
手足を拘束するだけじゃ、逃げ出される可能性があるのは前回の件で学習済みだ。
「本部に着く頃には、効き目も切れるはずだから安心しろよ。」
そんなの、安心できるわけない!
そう想いを込めて睨みつける。
「そう睨むなよ…。しかしまァ、セイレーンってのは本当に不思議な色合いの瞳をしているんだな。」
無遠慮なほど、しげしげと顔を眺める。
「逆に言えばそれくらいしか特徴がないから、探しずらいけどな。」
「まったくだ。おかげでせっかくのSランクの手柄も、CP9に持ってかれちまった…。」
(CP9…?)
聞き慣れないワードだ。
コードネームかなにかか。
だとしたら、あの仮面の人がCP9…?