第23章 仮面の暗躍
ローはきっと今頃、すごく心配しているだろう。
散々気をつけろ、と言われていたはずなのに、こんなに簡単な策に易々と掛かってしまった自分が情けない。
悔しくって唇を噛む。
「しかし…、この女、ずいぶん綺麗な顔してるな。」
顎を掴まれ、グイッと海兵の方へ向かされる。
「……ッ!」
触るな! と拒絶したいけど、声が出ない。
「オイオイ、変な気を起こすなよ…。」
「…少しくらい、いいじゃねぇか。コイツ、海賊なんだろ。」
まぁ…、と止めに入った海兵もモモの身体に視線を落とす。
服から僅かに露出された肌は、白くきめ細かい。
そういえば、ここのところ任務漬けでずいぶんご無沙汰だ。
「なぁ…、この女が本部に連れて行かれたら、どうなるか知ってるか?」
「いや…。」
自分が本部に連れて行かれたら…。
どうせモルモットのように飼い殺されるに決まってる。
しかし、海兵の口からはモモの思いもよらぬことが告げられる。
「繁殖させるんだよ。」
一瞬、息が止まった。
繁殖…?
それって、どういう意味。
モモの欲しい答えは、すぐに返ってきた。
「コイツらの能力って、遺伝性で女にしか受け継がれねぇだろ。Sランクの能力だが、コイツは育っちまって政府の言うことなんざ聞きそうにない。」
「…それで、ガキを産ませて1から育てるってことか。」
「そういうこと。可哀想になァ…。」
そう言いながらも、これっぽっちも同情がこもってない視線を向けられ、ゾッとする。
(……嘘。)
海軍に捕まれば研究対象とされ、実験動物のような日々を送ることになると思ってた。
あながちそれも間違ってはいないが、現実はモモの想像を大きく越える。
(子供を…産まされる…?)
それはつまり、ロー以外の人と身体を交えるってことで…。
麻痺したはずの身体が、ぷるぷると震えた。
そんな未来なら、死んだ方がマシ…!