第3章 ハートの海賊団
「キャプテーン!」
ローを呼ぶ声に一瞬だけ手が緩んだ。
その隙を見逃さず、モモは彼の腕から抜け出すことに成功する。
「チッ…。…どうした、ベポ。」
「キャプテン! あれ、モモもここいたの?」
モモは頷いてそそくさとベポの背に回り、ローから距離をとる。
ベポはその様子を不思議そうに見やるが、ローが「なんだ?」と聞くので気にせず要件を口にした。
「次の島への到着時間が見えたんだ。風向きが良くて、今夜にでも上陸できそうだよ。」
(今夜…!)
「そうか…。なら今夜は久しぶりに美味い酒が飲めそうだな。」
「アイアイ! 今夜はご馳走だね!」
上陸の打ち合わせをし始める2人を残し、モモはデッキへ上がった。
今日の天気は快晴で、心地よい風が吹いている。
「あれ、モモ。こんなとこでなにしてんの~?」
シャチとペンギンだ。
風に当たっているのだ、とニコリと笑って答える。
「ああ、今日は気持ちいい天気スもんね。」
ペンギンが俺もそうしよう、とゴロリと横になる。
「なあ、モモ。もうすぐ島に着くって聞いたか?」
つい今ほど聞いたばかりだ、と頷く。
「そっかー…。モモはさ、島に着いたらどうすんの? 行くとこあんのか?」
「………。」
「行くとこないならさ、もうちょっとこの船にいればいいじゃん。」
「そうスよ! 俺らが船長にお願いしてやるから。」
(2人とも…。)
じんわりと目の奥が熱くなる。
ローに望まれ、
ベポの友達になり、
シャチとペンギンに残ることを願われる。
(わたし、この船に拾われて良かった。)
2人から顔を逸らし、頬を伝った涙を隠した。
この時モモは、これから自分がとるべき行動を決めた。