第23章 仮面の暗躍
その頃、ようやくアイスバーグと話を終えたローはモモの姿を探した。
(アイツ…、どこに行きやがった。)
どれだけおとなしくしていろ、と言ってもきっと彼女は言うことなんて聞きやしない。
どうせちょろちょろと動き回っているに違いないのだ。
ローはため息ひとつ吐くと、モモを迎えに作業場に足を向けた。
(……おかしい。)
しばらく探したが、モモの姿は見当たらない。
このむさ苦しい造船所内で、モモはさぞ目立つことだろう。
それなのに彼女の気配すら感じないのだ。
まさかモモとて、造船所の外に出ることはしないはずだ。
「…あれ、あんた。こんなところにいていいのかよ。」
自分に向けられた声に振り向けば、パウリーが不思議そうにこちらを見ていた。
「どういう意味だ。」
「いや…、だってあの子、ずいぶん前に造船所の裏に向かったぜ? あんたが呼びつけたんだろ?」
「なんのことだ。」
この男の言っている意味がわからない。
「だからさ、さっきあんたが呼んでるから造船所の裏へ行くってあの子が言ってたんだよ。…急いで向かったはずたけど、会えなかったのか?」
「……。」
待て、なにを言っている。
自分はたった今、アイスバーグと話を終えたばかり。
当然、モモを呼びつけてもいない。
では誰が自分の名をかたってモモを呼びつけたのか。
「---!」
その考えにいたった瞬間、ローは勢いよく走り出した。
「あ…ちょ…、オイ。」
パウリーはわけもわからず、ただ呆然と立ち尽くした。
(なんなんだよ、いったい…。)
ここは政府御用達の造船所。
だから、政府の人間がどこかに紛れていてもおかしくないのだ。