第23章 仮面の暗躍
教えてもらった脇道を進んでいくと、すぐに造船所の裏側にたどり着いた。
裏側にはこれから修理するであろう船が置いてあるが、意外と人気がまったくない。
モモは知らなかったが、今、造船所では政府の大口の依頼が入り、とても忙しくてこんなところで油を売っている職人などいないのだ。
「ロー?」
とりあえず呼んでみたけど、反応はない。
もう違う場所へ移動してしまったのだろうか。
このままぐるりと一周してみようか…。
そんなふうに考えて、足を進めたときだった。
一迅の風が頬を撫で、背後に気配を感じた。
「え…?」
風につられて振り返ると、そこにいた人物に目を見開く。
そこには、昨日会った、仮面を被ったあの人が…。
「---!」
咄嗟に飛び退いた。
モモの頭が、この人は危ないと警鐘を鳴らす。
(逃げなくちゃ…!)
どうしてそう思ったのかはわからない。
だけど、とにかく走った。
ヒュン…!
「……!」
しかし、背後にいたはずの仮面の人は一瞬のうちにモモの正面に回り込んだ。
なんという身体能力。
本能的に、逃げられないと悟った。
「きゅきゅー!」
モモの肩からヒスイが跳び、触角を刃に変えて仮面の人へと斬りかかる。
“嵐脚”
ズバ…ッ
「ぐきゅ…ぅ…!」
目に見えないほど素早く繰り出された蹴りは、斬撃となってヒスイを切り裂いた。
「ヒスイ!!」
ドサリと地に落ちたヒスイに駆け寄ろうとしたとき、モモの首筋に手刀が落ちた。
ゴス…ッ
「うッ…。」
衝撃は脳天を突き、あっという間に視界が黒ずむ。
バサバサバサ…。
薄れゆく意識の中、仮面の人の肩にハトが止まった気がした。