第23章 仮面の暗躍
「さて、ヒスイ。少し2人で探検しましょうか。」
「きゅい!」
ヒスイを肩に乗せ、邪魔にならない程度に造船所内をぶらぶらと見回る。
そわそわ
ちらちら
「わあ、大きな大砲ね。いったいどれくらいの火薬が必要なのかしら。」
なんの気なしに呟いてみれば、作業中の職人が振り返った。
「…た、試し撃ちしてみます?」
「あ、いえいえ。ごめんなさい、お邪魔でしたね。」
余計な気を遣わせてしまっただろうか。
慌てて手を振って、その場から離れた。
そわそわ
ちらちら
「見て、ヒスイ。素敵な装飾ね。」
船の外板に施された細かな装飾に感嘆の息をもらす。
「よ、良かったら、もっと近くで見なよ…。」
これまた近くにいた職人が声を掛けてきた。
「あ…、大丈夫です。お気遣いなく。」
笑顔で返して、その場を離れる。
やっぱり気を遣わせてしまうようだ。
(すげェ、美人…!)
(可愛いなぁ、さっきすれ違ったら良い匂いがしたぜ。)
(こっち来ねぇかなァ…。)
モモには自覚がないようだが、彼女の容姿はとても整っている。
加えて、カリファのようなクールビューティーではなく、花のような愛らしさがあるため、職人たちの男心をくすぐるのだ。
どうにかお近づきになれないかと、先ほどから ちらちらと視線を送られている。
しかし、残念ながらモモの鈍さは折り紙付きだ。
まったくと言っていいほど、気がつかない。
(なんだかお邪魔みたい。きっとわたしみたいな小娘が造船所を見学してたら迷惑なんだわ。)
見当違いな考えにいたり、ローが来るまでおとなしく時間を潰そうと作業場を後にした。